あいりん地区でホームレスと路上で寝た。大阪西成区

※リアルなあいりん地区に宿泊した内容ですので、現実から目を背けたい方は今のうちに出てください。
紛れもなく、これが先進国日本の裏側です。現実に向き合いたい方、今の自分の仕事に於ける悩みがある方は是非閲覧願います。


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朝、目を覚ますと車のエンジン音や路上生活者同士の『オハヨー！』とか『何日契約の仕事？』などが聞こえてきた。


昨日は日本一のスラム街『あいりん地区』の福祉センター下の路上で彼らと並ぶように寝てみた。
昨日、あいりん地区を出て堺市に向かったものの、戻りたくなって戻ってしまう。


遊び半分で戻った訳ではない。

バカにしてる訳でもない。

怖いもの見たさでもない。


薄っぺらい僅か半日のあいりん地区を見ただけで何もわからないまま、走り去れなかっただけ。

その地区を出てすぐに国道を走り、いつもと変わらぬ情景や人々に違和感を感じてさっきの失われた世界観は一体なんだったのだろう。と離れれば離れるほどその違和感は、次第に大きな忘れ物をしたかのような忍びない気持ちになっていく。

うっかり忘れ物をしたら取りに戻る。
そんな当たり前の事のような気持ちだった。


公園で火事のような焚き火をしている人達も居る。
大勢の人々が暖をとるには仕方ない事なのだろう。


そして無情にも太陽は落ちていき、暗さと寒さが増すこのスラムに、ワンカップ専用自販機の青白い光が不気味に彼らを照らし始める。




そんなスラムにほど近いエリアで800円の高級パンを屋台で売る少女が居た。

彼女は地元(あいりん地区)の人だったので聞いてみた。


『今日はここで寝るんだけど、どの辺がいいと思う？』

すると、

『えっ。ここに寝るんお兄さん。お金とか盗られんようにしいやー。公園の中にテントなんかわからんわ。中の人たちに聞いてみいやー。たぶんテントなんか無理やとおもうでー』

と、『テントが無理』の意味がまるでわからない。


あくまでも日本の『公園』であって、不法に占拠しているホームレスさん達は良くて、俺がテント張って寝るのがダメな理由がわからない。

なぜだ。


公園の脇でワンカップを飲んでる人々に聞いてみた。

『すいません。ここ初めて来たんですけど、あそこの公園(三角公園)に泊まろうと思うんですけど。』

と言うと。


『わしらココじゃない※からわからんけど、無理じゃない？』

という。


※路上生活者ではあるが、三角公園の中で住んでないという意味。


なぜですか？

と言うとそこの中の一人が横から話を挟むように

『ここは管理者がおんねん。その管理者に話つけずにあんたがテントなんか張ったらやばいで。他の公園でテント張るならええけど、ここはそんな甘い世界やないで兄ちゃん！』

と少し憤りを交えたようなしゃべり方で言われた。



その管理者とは一体誰なのか。

行政の人か、ボスがいるのか。それとも暴力団なのか、それはわからない。


俺は少しも分かっていなかった。
道路で寝てる人とあいりんの公園で寝れる人の違いを。

公園で寝れる人達は焚き火も出来るしごみも捨てれるし、家も建てられる。
でも、路上で寝る人達は毛布にクルマって傘を開いて寝るしかない。

ここにも格差社会が形成されていたのだ。



そんな彼らの大事な公園にノコノコとテントを持っていって泊まろうもんなら、リンチに合ってもおかしくない。

なぜならそこは、今日を生きる為に必要な彼らのナワバリだから。
その管理者に対してショバ代が発生している可能性すらある。


昨日話したおじさんは、あいりんで露店みたいな店をやっていて、月に二万円ショバ代を払ってるらしい。

それも誰に払ってるのかは教えてくれなかったけど
『こんなんでもなー。生き血を吸う奴がいるんだよ。どこにでもいるよ』って言っていた。



そして別の方が、

『あっ。兄ちゃん。シェルター行きなよ。まだ間に合うわ！今みんな並んでるとこだから。まだ間に合うってほら！』


と【シェルター】を薦められる。


どうやらホームレスシェルターがあって、そこで一夜を明かす事が出来るらしく並ぶように薦められた。

でも、俺がベットをひとつ使ったら誰かが入れなくなる。
今日と明日しか考える事が出来ない現実に突き詰められている人を差し置いて、若僧がシェルター体験学習なんてしてる余裕などこの地にはまるで無い事はここに来てからずっと肌で感じていた。



だから全く気が乗らなかった。



『そうですか。んー。………。』


と乗り気じゃないオーラを出してたら、


『あの兄ちゃん……実はみんな知ってて聞いてきてるんじゃないか？(シェルターの事)』とヒソヒソ話をされていた。

言わないまでも『うちらバカにされてたりして』という感じの雰囲気になる。

『すいません。違う公園でテント張ります。とても勉強になりました。ありがとうございます。』

とお礼を言って去ろうとしたら



『まぁ。あんた若いから許しちゃるわー(笑)頑張れよ兄ちゃん！』


と励まされた。


そうして、あいりん地区で泊まる事は諦めとりあえずイオンへ向かう。



閉店になるまでブログを打ち、半額の刺身を買って、どっか近くの公園に泊まろうとしていた。


こんな寒い時にあいりんの彼らはどうしているのだろうと心配したって何も出来ないのだけど、やっぱり夜のあいりん地区を見てみたくなって通りすぎるだけ行ってみようと思い向かう事にした。


あいりん地区入り口あたりにはパトカーや警官の姿。






昼間の喧騒をまるで感じさせず、誰も居ない公園。




もうほとんどの人が寝ているようで、出歩いてる人はほとんど居なく静まり返るあいりん地区。














滑り台はもうその役目を果たしていない。





こんな３帖の旅館もある。




自販機は頑丈な鎖で繋がれている。




看板多数。




ガード下ではない。ガード横で寝る人々。通りすぎる電車の渇いた音が寒さを誘う。





目を覆いたくなるような世界。





先進国の我が国日本でこんなスラム街があるなんてとても信じられない。

現実の中の現実に突きつけられる。


すると、頭に低反発マットレスを乗っけて歩いて来た50代くらいの人に突然話しかけられる。

『あの。これ仕入れてくれませんか。暖かいです。寝心地いいです。2000円でいいです。いや1500円でいいです』


突然話しかけられたので、驚きながら顔を曇らせると


『1200円でも、1000円でも。たのんます。仕入れして歩いてるんですよね？お願いします。助けてください。』


と言われた。
リヤカー引っ張ってるから朝市の物品を探し回ってると思われたらしい。


『いや…。えっどうしたんですか？』

と事情を聞くと、明日の朝から仕事を貰えて朝六時までに伊丹方面(兵庫と大阪の県境付近)に行かなきゃならないという。

今日もさっきまで仕事だったけどゲンナマで貰えなかったと嘆いていた。


どうしようもないから、寝るのに使ってた低反発マットレスを売って千円にでもなれば伊丹までの電車賃になり、朝六時から仕事に就けるという。


『お願いします。頼みます。一時間以上探してるけどこんな時間に誰も買ってくれません。警察はお金貸してくれなかったし。もう参ったな。困った。どうしよう。もしかしてあなたもお金ないの？』


と言われ、『………。はい。』


とっさに嘘をついてしまう。


『………。そうですか。』と肩を落として、道行く人に話しかけてシカトされたり、居酒屋に入って行ったりして断られながら彼は去っていった。






あまりにも切実な訴えを目の当たりにして、エンジン止めて原付リヤカーに股がったまんま、しばらくその場から動けなかった。

なんも言えない。
なんもしてやれない。
燃料使って無駄にぶらついてる俺は、彼らの目にどう映ってるのだろうか。


明日行けなかったら、やっと貰った仕事が出来ないばかりで無く、次から仕事を回して貰えないかもしれない。

だから、あんなに困っていたのだろう。


彼の切実で苦しき訴えや、純粋な目を思い出してしまい、今マックでブログ打ってるだけで目頭が熱くなる。


でもなんかしてあげれないか。
自販機の下から一緒にお金拾ったり、俺の物品売ったり、なんかしてやれないか。

でも千円集めるのは至難の技だし。
俺のリヤカー内は基本拾い物で構成されていて、台車も売れないこの地域で売れるものなど何も無い。


よし。
千円貸してあげようと思い立った。


俺もカンパしてもらったり、お世話になってばかりだ。
貸す事くらいなんでもない。


明日無事に働いて、お金貰ったら普通郵便でいいから千葉に送ってもらえればいい。もし、彼を信じて千円が送られて来なかったら、自分のセンスを疑えばいい。


そう思い立つまで10分は要しただろうか。

目の前に座り込んで居た老人が『まだいるのか』という目でこちらを見ている。


彼を探す為に走り出した。
あいりん地区全体をしらみ潰しに探す。
一時間くらい探し回っただろうか。




彼はどこにもいなかった。



これ以上探し回って仕方ないので寝場所探しへ。

寝れそうな所には、鉄格子があって入れない。




公園の広場も。




建物にも。




警察署もこのあり様。⬇





何度も言うが本当に日本かここは。



そして、福祉センターに泊まることに。


寝ている人と人との間にテントを張る。
物音を立てないように、息を潜めながら寝る準備。反対車線は全て路上生活者。





こんなところで新品テントなんか張ったら目立つので、リヤカーのカバーをかける。




リヤカーは剥き出し。
中身を盗まれない事を願う。




そして、マジでリヤカー盗まれたら困るので鍵つけてさらに紐を結び、







リヤカー動かしたら手が引っ張られるように手にくくりつけて就寝。




夜中に叫んでる人とか居て、起きたりもした。

ウウッ。という寝返りの際に出す声も聞こえてくるがなんとか良く眠れた。


朝５時前くらいに、すぐそこに居る車のエンジン音で起きると、NPO かなんかの車が止まってて、『もう起きんと車入るでー』と言われた。





すると突然一斉にシャッターが上がる。

大慌てで片付け終わると警備員さんが、話しかけてくれて色々教えてくれた。


ここは、仕事を紹介してくれるとこなんよ。朝５時からみんな並ぶんよ。



と言っていた。

朝早く起きた方が良い仕事が見つかるという。
そして、彼もあいりんに住む路上生活者の一人であり、朝５時から９時５０分まで仕事して１日5700円貰えるという。
契約は三日間。

三日後の仕事があるかどうかはわからない。


年をとったら、建設現場では働けないから仕事口も少なく、警備などの仕事を回してもらって仕事をしているという。



俺が寝ていたところは矢印のところ。





もう、昨日一緒に寝ていた人達は居なくなっていた。

そして、リヤカーの後ろの日本一周は隠して朝市へ。




朝市を徘徊する人々。





路上で拾ってきたような物を新聞紙に広げ、座り込んで売っていた。





コピー商品らしきものや、違法DVD をはじめ。





病院に行って貰った湿布や薬を売ってる露店の薬局。




日曜雑貨とか。





そして俺は50円でプラスドライバーを一本購入。

その露店のおじさんに。

『あんた。おまわりか？』といわれる。

盗撮がバレたのだ。


ここで売ってる物の殆んどが違法だ。

だから、思いっきりカメラなんて出せるはずがないのでコッソリ撮っていた。

しかしながら彼にはバレてしまったので、実は今………日本一周中で昨日ここに泊まったんです。これも日本の一部なので思い出に撮りたかったんです。


というと、『なんだ。ビックリするやんけ。ほんまー』


と事なきを得る。



そして、寒くて仕方ないので暖かいお茶を自販機で買う。

御値段全品50円。ペットボトルは80円。





そして、拾ってきたコンビニのおにぎりやお弁当。当然ながら賞味期限切れ。


１列で100円。





俺は１列6個のやつを100円で購入。

その列は賞味期限から日数が経ってるから、１個おまけしてあるらしい。


そして、ぶらついてるとドライバーを買った露店のおじさんに小声で

『にーちゃんあんなん買ったらあかんって！賞味期限切れてんねんで？何回も俺下痢になってるんや。絶対食われへん』

とゴミなら捨てといちゃるわ的な感じでおにぎり６個を奪われそうになる。



そして、もうひとつのお弁当屋は大人気だ。
人集りができていた。




買いに来てたおじさんになんで混んでるのか聞いたら、『ここの特徴は下手したら賞味期限内の物もあるんや』と。


コンビニかなんかに伝があり、さっき賞味期限が切れたやつとかを売ってるという特徴があるらしい。


えっ。そんな賞味期限気にします？？さっき１日賞味期限切れたおにぎり6個買ったんですけど………というと

『全然食えるんやけどな、ご飯固まっててうまないやろ』と言っていた。


なるほど。
そういうことか。
だからここは人気があるらしい。

彼は長くここに住んでいて、もうどれが新鮮か一目瞭然だという。

丁寧に説明してくれた。


この黄色い所が熱いらしい。




お礼を言って朝市を後にした。


すると、兄ちゃん兄ちゃん！１００００円いらん？？？へんな所やないから安心して！

と仕事紹介屋に遭遇。





そうやって朝にワゴン車で探し回り、比較的若い体力のある人を現場へ連れ出すシステムらしい。





そして今日もまた、彼らの１日が始まる。







自分の影が、何かを訴えている。




彼らと触れあってみて気づいた事は山ほどあって書ききれない。
怠けてどうしようもない人もいるんだろうけど、俺の目には純粋に仕事が欲しい人ばかりに見えた。

彼らを煙たがったり、臭いものに蓋をしている世間やマスコミや行政は、この問題を何とかしなければならないのではないか。



東日本大震災の時、直接的被害が無い地域まで自粛ムードになり、物は売れず、旅行しなくなり、結果として余計被災地の経済を苦しめた事は俺の脳裏に思いっきり刻まれている。


現実から逃げたり、目を背けながらする同情こそ罪であると信じたい。


どうにかならんものか。
心から思う。


そんな事を考えながら、まだ日の出を迎えないあいりん地区に別れを告げ南下する。



コンビニに身を寄せ、背中で朝日を受け入れる。
そしてさっき買った賞味期限切れのオニギリを取り出す。





大体賞味期限は丸１日オーバー。
つぶれたり、二日切れてるのもあった。






お腹がふくれた所で



よし、出発しよー！と思ったら



大事件が起きていた。





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【本日の走行距離】

70キロ

【収入】
なし

【支出】

オニギリ６個100円
お茶50円
ドライバー50円
刺身150円半額
ビール120円
ガソリン430円
マック250円チキンなんとかとコーヒー

【本日のボヤキ】

『机上で考える事の虚しさを痛感した』






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