にほんブログ村ゲリラ雷雨の応援団が千葉に近づいた夏空の下、俺は別居する小学3年になる息子と月に1度のデートの日を迎えていた。
真っ黒な雷雲を避けるように東へ移動し海岸へ。
熱を蓄えた九十九里の砂浜、雷雲に吸いあげられる海風、立ち昇る入道雲を遠くから眺め、新しい夏を肌で感じていた。

白波立つ海辺で、無邪気にはしゃぐ息子。
彼は生まれつきレベル6(max)度のアレルギー疾患を患っていて重度アレルギーを持っている。
お味噌汁で使うの『本だし』なんかも実は『乳』成分が入っていて、意外なところにリスクが隠れているのでご飯を食べるのも一苦労だ。
給食もテーブル自体別で、食べ物も違う。お代わりもできない。
運動会ではお友だちともオヤツ交換なども出来ない。
その為常に注射器を持ち歩いていて、万が一アナフィラキシーショックになった場合は、救急隊員が駆けつけるまでの間に呼吸を確保するために太ももに注射を打たなければならない。
そんな息子が何も気にせず無邪気に遊んでいる姿と、成長した背中を微笑ましく見ていた。

九時までには帰さなければいけないので、逆算すると銭湯に行って……食事をさせて……と、時間はあるようで無い時間へと突入していき、急いでスーパー銭湯へ。
駐車場でオシッコ漏れるとか騒ぎだす息子。
靴が濡れて砂だらけなのでおんぶでスーパー銭湯のロビーへ
手続きをし、ロッカーキーを貰い風呂へ行こうとしていたとき息子がトイレから帰ってきた。
するとさっきまで持っていたリュックがどこにも無いとか言い出した。
えっなんだよ時間無いのに(>_<)
駐車場まで戻っても無い。
は。なんでだよ。
僅か20歩くらいで行ける距離なのに落としたら絶対見つかる筈なのに。
トイレを探しても、どこを探してもない。
何なんだよ。
僅か1分くらいの出来事。
あり得ない神隠しに遭いワケワカメ状態。
そのリュックには、例のアナフィラキシー応急用の注射器が入っている。
その注射器が無いということは、飯も風呂も入れないという事を意味していた。
完全にテンパり探しまくる。
この短期間に大切なリュックを無くした息子を叱責 なんでだよ💢
本人は大分凹んでいるご様子。
それもそのはず、そのリュックには必ずと言ってもいいほど持ち歩いているペンギンのぬいぐるみが入っていて、今は亡きおばあちゃんと一緒に水族館に行って買って貰った大切な物だった。
実際、海水浴後にペンギンをしまう際海水で手がベタベタしているからパパがしまって!とお願いされた。
そこまでして大切にしているものなのだ。
そんな大切なリュックが何故か突然消え、時間もない中で焦りが徐々にやり場の無い怒りへと推移していくのは無理もなかった。
そんな状況の中、チラッと息子を見ると……
あろうことかロビーにいる息子は何故かフルチンではないか。
はっ!?ズボンどした?!
と反射的に言うと、俺がリュック探してる間に砂を落とそうと、外でパンツ脱いでて置いといたら……無くなった……
と言うではないか。
ちーん。
この期に及んでパンツまで他界。
Tシャツでギリギリ隠しているのでミニスカートみたいになっている。
なんでだよ。
パンツもリュックも無くなって、現在息子はロビーでフルチン状況に陥っている。
唯一の救いは、かろうじてパパだけはパンツを失っていなくてパパえらい!みたいな状態。
はぁ凹
たまにいるよなー(>_<)。
小学生の上履きとか盗む変態。
だとしたら、息子のパンツの生存確率は著しく低下する。
ええぇい!!パンツはもういいや。
とりあえずリュックだ。
自分のシッポを追いかける犬みたいにロビーを探し回る。
どこにもない。
ロビーで呆然。
店員は皆こちらを見て
『どうされましたか?』
とオデコに書いてある。
どうされたかもまるで分からない俺は、絡まった糸をほどくように店員さんに説明。
すると、気の聞いた店員さんが防犯カメラをチェックしてくれるとの事。
しばらくすると事実が明るみに出てきた
なんと家族連れの団体が玄関に息子が置いといたリュックを間違って持って帰ってしまったという映像がカメラに納められていたというではないか。
お店はすぐに会員情報の割出しに成功。
事件は早期解決するかに思えた。
しかし携帯に連絡をとったものの、会員情報が古く『お掛けになった電話は……』と全く繋がらないという。
ちーーん
決して安くはない注射器を無くし、今日はご飯もお風呂も入れてあげれない罪悪感。
大切な大切な思い出のペンギンを失って、ロビーで泣きじゃくる息子。
現在、絶賛フルチンモードで泣く息子に優しい店員さんがタオルを持ってきてくれて息子の腰に巻いてくれた。
会員情報の住所を聞き出そうと試みるものの、やはり個人情報なので無理です。私たちが出来ることはここまでです。
と、それぞれの業務に戻って行った。
絶望的だった。近くの方であれば持ってきてくれるかも知れないが、もしも遠くの人でモラルに欠ける人であればそのまま捨てられる可能性も捨てきれない。
ただ防犯カメラにその事実は残っていてある程度の情報は店が握っている。
諦めたくない。
そうだ。
110番だ。
少し乱暴だが盗難扱いにして貰い、強制的にお店側に情報開示させるという手段に躍り出ることにした。
落胆し過ぎてる息子に希望の光り。
お店側にも警察へ連絡すると断りを入れ、110番でも盗難かどうかわかりませんが、事実リュックが無くなりカメラに残ってるので何とかしてもらえませんかと言うと、今から警察官が駆けつけますのでお待ちください!との事で警察官を待つことに。
警察官が到着し、事情を説明。
お店側も事情を説明。
すると、警察官の一人が『どんなリュック?特徴は?』というので特徴を伝えると、
警察官のひとりが、
警察官『あんなようなやつ?』と玄関にポツンと置き去りにされた1つのリュックを指差した。
俺『(゜ロ゜;………………あ。』
げっ。
まさかの無事発見。
間違って持っていった方が気がついて、黙って届けてくれていたみたい。
注射器とペンギンも無事。
一件落着に警察官3名も よかったねぇと胸を撫で下ろす。
安心し、安堵間に包まれ、感謝を述べて喜んでいると
警察官『そんな大事なもの入ってたの?』
と言うので、
ええ、大切な物が入ってたんです。
警察官『現金は入ってなかったんでしょ?』
俺『ええ。現金は無かったんですけど、注射器が入ってましてね(汗)』
警察官3名『ジロリ(¬_¬)』
俺『……。いや、子供用の注射器で……』
警察官3名『ジロリ(¬_¬)そうですか……。一応中身確認したら?なくなってる物あるかも知れないし』
(息子が既にリュックを持って行ってた事もあって……)
俺『いやいや、中身は確認しました。ありがとうございました』
という何故か何とも疑わしい発言になってしまう。
警察官『息子さんのお名前は?住所は?お父さん身分証出してもらえる?』
潔く出した俺の身分証の住所と、息子の住所が違い、名字も違い、髭面で色黒で注射器どうのこうの云ってて怪しさ満点の発言を繰返し、事件は無事に幕を閉じていった。
おしまい。
にほんブログ村あ、パンツは何故か軽トラの荷台に砂だらけで乗っていて無事発見。
やれやれ
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